伊賀山中に住む巨木の造形家ふじい忠一さんの話を転載します。木彫の世界を進みますが、木と言う素材に古臭さを感じて樹脂や金属など現代の素材に転じました。
しかし、自分の思い描いた通りにしかならない虚しい世界だった。
行き迷った30代初め、初冬の信州に行った。
松本から木曽に向かい、夜の山中で道に迷った。
冷え切った体で太い檜の幹に抱きつくと、暖かった。
起きろ、と言う母の声を聞いて、気がつくと夜が明け、自分は木に抱きついたまま生きていた。
樹木は涼しいだけではなく、暖かくもしてくれる。自在に調整出来る凄さも持ち合わせているのです。