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それぞれの土壌生物の役割

前述のようにそれぞれの土壌中では微生物が有機物の分解者として重要な役割を果たしています。

そして、土壌中における有機物分解は単独な生物群だけで行われているのではなく、動物と微生物の密接な協力、即ち食物連鎖によって成立しているのです。

ミミズやヤスデ、シロアリなどは年間大量の植物遺体を食べますが、それが腸管を通過する時、多数の細菌が繁殖することが知られています。

これらの動物は細菌に快適な棲家を与え、よく噛み砕かれ、湿らされた食物を定期的に与えています。

又、動物は地表に落下してくる植物遺体を土中深く運び入れ、微生物と植物遺体との接触を容易にしたりします。

微生物と土壌動物の関係

土壌生物は動植物の遺体や腐植を分解し、有機物を無機化して植物の再生産を支えています。

そのなかでも微生物の有機物分解能力は極めて大きく、林地の場合は特に糸状菌を中心とする微生物群によって有機物の全分解量中の83%が消費されていることが解っています。

耕地土壌の場合は糸状菌のかわりに細菌や放線菌が増えてきます。

これも食物連鎖の一因で林地の場合は粗大な有機物が多く、耕地の場合は微小な有機物が多いことから理解できます。

食物連鎖の逆転は有り得ないのか

南米のジャングルにホエザルと言う猿がいます。

この猿はある種の木の実しか食べません、アゲハ蝶の幼虫が柑橘類の葉を好んで食べるように、親は必ず柑橘類の葉に卵を産み付けますが、ホエ猿もこの木の実が主食でこれ以外の木の実はたべません。

この木の実をまるごと食べて種子を糞とともに木の下に落とします、地上にはこの糞を主食にするスカラベ(糞ころがし)と言う昆虫がいて糞と共に種子を地中に埋め込みます。

こうして猿は自分たちの主食になる樹木を増やし、樹木も自分の子孫を少しでも遠くに確実に発芽出来ることができ、糞ころがしもより多くの食糧を安定的に確保できるのです。

このように生物界の食物連鎖には計り知れない掟があって、自分たちの食糧を絶やさないように工夫して実行しているのです。

まして、宿主を攻撃したり食性を変更することは絶対に有り得ないと思われます。それぞれの種は何百万年もの間、この掟を守り続けてきたのです。

生物の掟、DNAに刻み込まれた使命

生物のうち水中や地上で生活する動物の食物連鎖はアメーバやプランクトン、ミジンコなどからはじまり頂点に人間がいて比較的に解りやすいのですが、地中の土壌生物の場合、特にウイルスや細菌、微生物などの食物連鎖はまだはっきり解明されないところが沢山あります。

例えば昆虫などの世界に見られる天敵のような関係がないのか?

食べられるものが居て、食べるものが居る。

食物連鎖の厳然たる事実であり入れ替わることが在りうるのか?

 

闇と光が替わらいように自然の掟は変わらないことを信じよう。

天然林と耕作地の違い

天然林の場合は前述のような繰り返しが永遠に続きますが、これを自己施肥系と言って、ほっておいても植物は無限に成長していき、地中の土壌生物は繁栄を続けます。

一方農地の場合は地上で成長した作物は大部分が収穫され持ち去られます。

例えばキャベツを反当たり10トン収穫して持ち去ったとすると地下では何百億と言う土壌生物が、還って来るべき食料が来ないので大混乱を起こしてしまいます。

微生物群は食糧饑饉で、あるものは休眠し、あるものは絶滅し、共食いも始まり、又別の群は新鮮な根に取り付いたりして地中の生態系は狂い始めるのです。

土壌生物と有機物分解について

線虫の容疑がはれたところで土の中の仕組みを見てみましょう。

生き物の世界では地下でも地上でも、水中でも食べ物が大事である事は理解できます。

空気や水も同じですがそれは普通にあるとして、食べ物が無くなると人間でもおかしくなり常軌を逸脱することがあります。

土壌には絶えず太陽エネルギーが注がれ、その一部分は高等植物により固定されて有機物が生産されます。

この有機物はいずれ枯死して土壌に入り土壌生物の食料になります。

そして土壌生物はこれらの有機物を食べて窒素や炭素、りん酸や加里に分解し無機化します。

更に高等植物はこの無機化された養分に依存しながら太陽の恩恵を受けて成長していき、有機物を創りだし、役目を果たした小枝や葉は落下して再び地中へ戻って土壌生物の食糧になります。この繰り返しを無限に続けてきたのです。

線虫容疑者の弁護人として

③の場合は寄生ではなく共生なのです。

線虫は他の菌根菌と同様に植物の根から分泌される物質を栄養にしながら、根が届かないところにある植物の栄養を鞭毛を伸ばして取り寄せ植物に与えて共存しているのです。

しかし、土中に有機物が無くなると腐植を餌にしている多くの土壌動物や微生物、細菌やウイルスなどの生態系に食物連鎖から生じる大混乱が起きます。

あるものは休眠し、あるものは共食いしたりして細菌やウイルスなどが大発生します。ミミズの口腔からでるある種の酵素は新鮮な木の葉を数時間で腐らせることが出来ますが、この様な酵素をもつ細菌は腐植が無くなると、普段は見向きもしない新鮮な根に取り付き腐らせるのです。その現場に共生している線虫がいるものですから犯人扱いされてしまうのです。

細菌は微小なので目立ちませんが線虫は大きいので目立ってしまうのです。

連作障害は線虫のせいではなく土中の有機物不足による土壌微生物群の食料争奪戦の結果なのです。証拠は最も強力な殺虫剤を撒いて線虫を殺しても連作障害は克服出来ないことで明らかです。

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連作障害の原因は線虫だと言うのは冤罪だ

土壌線虫は土壌動物の中では比較的大きく中形の動物で顕微鏡の世界では結構目立ちます。

これが災いして連作障害などの容疑者として指名手配されることが多いのです。

線虫はその食性で三つの群に分けられます。

①腐生性:動植物の遺体を食べる種類

②捕食性:他の線虫、小ミミズ等を捕食する種類

③寄生性:ライフサイクルの一時期に高等植物の根に寄生し、その組織を攻撃する種類

ただし①②の種類が圧倒的に多いと言われています。

③の種類の寄生すると言う事までは事実ですが、植物の組織を攻撃することはありません。

 

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化成肥料と連作障害の因果関係

有機物の無くなった土に化成肥料だけをやり続けると微生物は食べるものが無くなってほとんど絶滅してしまいます。

それまで微生物の餌になっていたような細菌やウイルスが作物を襲ってきたり、線虫の仲間は今まで作物の根と共存していたのに、餌となる腐植が無くなると共食いが始まり、挙句の果て宿主であり、唯一の有機物である作物の根に、新鮮な有機物でもある種の酵素を出して腐生化させる微生物がいて、新鮮な根を腐らせます。

そうすると人間はその場にいる線虫を悪者と決めつけ農薬を振りかけます。

こうして土の中の生命を全て殺して、悪循環を重ねていくのです。

 

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回転寿司と注文寿司の違い

化成肥料を例えるならば、さしずめ回転寿司のようなもので、根の前を通り過ぎる養分を通り過ぎる瞬間に吸い取らないと地下へと流されていってしまいます。

堆肥や有機質肥料は注文寿司のように、根の要求に従って板前みたいに微生物が有機物を分解して必要な養分を与えます。

微生物や菌根菌は根から排出される分泌物を貰ってエネルギーにしているものもいて、うまく共存しているのです。

更に回転寿司のような化成肥料は決められた養分だけが流れてきますが、堆肥や有機質肥料はいろんな微量要素を必要に応じて必要な量だけ板前である微生物が与えてくれます。

しかも板前である微生物は何人(何匹)もいるのです。スプーン一杯(約1g)の堆肥の入った畑の土の中には億単位の微生物が生息しています。

 

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