林床の腐植層の形成には驚くほどの年月がかかります。
一般に普通の混合林では1年間に落葉する葉量は針葉樹、広葉樹、常緑樹、落葉樹ともに平均していて、落葉した葉っぱを林床に敷き詰めると2~3枚が重なる程度と言われています。
従ってその葉っぱを分解し腐植としてA層を作るには100年かかって1cmと言われています。これは主に樹木が落とす葉や小枝、花や実、それを食べる土壌動物の糞や死骸を微生物が分解して腐植層を作るのですが年月が経過すると下層部から溶けていき樹木や下草に吸収され消費されてしまうのでそんなに厚く堆積することはありません。
腐植の生産量と消費量の正確な計算値は複雑で紙面が足りませんが、樹木の移植、ポット苗の定植などの場合、初めて農耕地へ投入する場合等は概ね1㎡あたり20kgぐらいが天然の広葉樹林のA層に近い値だと試算できます。
緑化地の植栽用地造成等の場合や農地での野菜の定植の場合は表面に散布しそのまま植樹、定植して構いませんが、雨水や潅水で流亡する恐れがあるときは既存の土と軽く攪拌すると土壌が安定します。
森林の林床を覆っているA層が樹木の成長に欠かすことが出来ない「良い土壌」であることは世界中の農耕者は知っています。
だから昔は焼き畑農業や広葉樹林の開墾が盛んに行われていたし、たい肥や肥料に気づくまでは林床を利用して農耕を行い、養分を使い果たすと別の場所へ移動していたのです。
ですからA層に限りなく近づけるように作られた緑葉たい肥は全ての植物の発芽、成長に効果があります。部分的な肥料効果は化学肥料にかないませんが、大きな違いは土に生命を吹き込み生きた生態系を形成することで化成肥料では供給することが出来ない、植物にとって必要な微量要素を与えます。
土壌動物や微生物と協同して必要な時に必要な量を供給して真に健康な植物に育てるのです。効くと言うよりも植物が植物らしく普通に育つと言うことです。
植物が育つのに「良い土壌」とはどんな土壌なのか?通気性や通水性が良くしかも保水力が有り、栄養(肥料成分)が充分で保肥力が有ると言う矛盾した幾つもの条件をクリアしなければなりません。
人工的に調合しても部分的にはクリア出来ますが全てを満たすことは困難です。
要するに定義が無いのです。
そこで我々は森林の林床にある表層土(学術的にはA層)を理想の「良い土壌」と定義して、それに近づけるような土作り、たい肥作りを目指したのです。
林床は樹木が自分自身が成長する為の自己施肥系と言われる生態系を動物や昆虫、微生物と協同して形成しています。更に子孫を残し繁殖するように林床に種子を落とし、発芽させ成長出来るように準備された産床でもあるのですから、植物にとって悪いわけがありませんし、これ以上の植物にとっての「良い土壌」は有り得ないと確信しました。
これまでのたい肥は稲藁、落ち葉、樹皮、籾殻などC/N比の高い窒素分をほとんど含まない原料だったので人糞尿や畜糞尿などを添加して窒素分を補っていたのです。
現在では人糞尿は使用できず、畜糞尿は与えてる餌が高濃度高栄養配合飼料で抗生物質やホルモン剤などの添加物が入っており、昔の畜糞尿とは別のものになっているので化学肥料とあまりかわらなくなってしまいました。
ところが生育中の緑の葉っぱを養分分析してみると窒素含有量は鶏糞と同じぐらい有り、しかも土壌生物が好む蛋白質や植物性脂肪、その他多くの微量要素が素材そのものの中に含まれていたのです。
これは粗大なものはまず土壌生物(ミミズ、トビムシ等)が食べその糞や食べかすを微生物が分解するので発酵、完熟がすごく早まります。
このことに気づいたのは我々が日本で最初です。そんなことから緑葉堆肥と名づけて生産販売を始めました。40年も前のことです。
たい肥の歴史は古く、西洋では紀元前からアリストテレスが「腐植が植物の食べ物」と唱えており、1800年代の始め頃から農業に本格的に利用されています。
日本においては弥生時代に稲作が始まって以来2000年以上田畑に投入され続けてきました。だから同じ田んぼや畑で延々と収穫が続けられたのです。
即ち土の生命を繋いできたのです。ところが昭和30年頃から近代農業と称して省力化や機械化が普及して化学肥料が使用されるようになり、牛馬の必要もなくなり稲藁(わら)もなくなり、重労働だったたい肥作りは誰もやらなくなりました。
サプリメントのような化学肥料はそれまで先人たちが入れ続けてくれたたい肥のおかげで素晴らしく健全だった田畑の地力のせいで一時的には良く効き、収量も上がりました。
しかしサプリメントはあくまでもサプリメントで主食には成りえませんでした。
肥満体で病気がちの現代人と同じく抵抗力がなく、農薬や殺虫剤、除草剤に頼らなければ収穫出来なくなってしまったのです。
現在の田畑はサプリメント的な部分的な養分の過多と微量要素の不足、微生物やミミズ等生物の不在で非常に不健康であり、瀕死の成人病状態なのです。