南米のジャングルにホエザルと言う猿がいます。
この猿はある種の木の実しか食べません、アゲハ蝶の幼虫が柑橘類の葉を好んで食べるように、親は必ず柑橘類の葉に卵を産み付けますが、ホエ猿もこの木の実が主食でこれ以外の木の実はたべません。
この木の実をまるごと食べて種子を糞とともに木の下に落とします、地上にはこの糞を主食にするスカラベ(糞ころがし)と言う昆虫がいて糞と共に種子を地中に埋め込みます。
こうして猿は自分たちの主食になる樹木を増やし、樹木も自分の子孫を少しでも遠くに確実に発芽出来ることができ、糞ころがしもより多くの食糧を安定的に確保できるのです。
このように生物界の食物連鎖には計り知れない掟があって、自分たちの食糧を絶やさないように工夫して実行しているのです。
まして、宿主を攻撃したり食性を変更することは絶対に有り得ないと思われます。それぞれの種は何百万年もの間、この掟を守り続けてきたのです。
生物のうち水中や地上で生活する動物の食物連鎖はアメーバやプランクトン、ミジンコなどからはじまり頂点に人間がいて比較的に解りやすいのですが、地中の土壌生物の場合、特にウイルスや細菌、微生物などの食物連鎖はまだはっきり解明されないところが沢山あります。
例えば昆虫などの世界に見られる天敵のような関係がないのか?
食べられるものが居て、食べるものが居る。
食物連鎖の厳然たる事実であり入れ替わることが在りうるのか?
闇と光が替わらいように自然の掟は変わらないことを信じよう。
天然林の場合は前述のような繰り返しが永遠に続きますが、これを自己施肥系と言って、ほっておいても植物は無限に成長していき、地中の土壌生物は繁栄を続けます。
一方農地の場合は地上で成長した作物は大部分が収穫され持ち去られます。
例えばキャベツを反当たり10トン収穫して持ち去ったとすると地下では何百億と言う土壌生物が、還って来るべき食料が来ないので大混乱を起こしてしまいます。
微生物群は食糧饑饉で、あるものは休眠し、あるものは絶滅し、共食いも始まり、又別の群は新鮮な根に取り付いたりして地中の生態系は狂い始めるのです。
線虫の容疑がはれたところで土の中の仕組みを見てみましょう。
生き物の世界では地下でも地上でも、水中でも食べ物が大事である事は理解できます。
空気や水も同じですがそれは普通にあるとして、食べ物が無くなると人間でもおかしくなり常軌を逸脱することがあります。
土壌には絶えず太陽エネルギーが注がれ、その一部分は高等植物により固定されて有機物が生産されます。
この有機物はいずれ枯死して土壌に入り土壌生物の食料になります。
そして土壌生物はこれらの有機物を食べて窒素や炭素、りん酸や加里に分解し無機化します。
更に高等植物はこの無機化された養分に依存しながら太陽の恩恵を受けて成長していき、有機物を創りだし、役目を果たした小枝や葉は落下して再び地中へ戻って土壌生物の食糧になります。この繰り返しを無限に続けてきたのです。
③の場合は寄生ではなく共生なのです。
線虫は他の菌根菌と同様に植物の根から分泌される物質を栄養にしながら、根が届かないところにある植物の栄養を鞭毛を伸ばして取り寄せ植物に与えて共存しているのです。
しかし、土中に有機物が無くなると腐植を餌にしている多くの土壌動物や微生物、細菌やウイルスなどの生態系に食物連鎖から生じる大混乱が起きます。
あるものは休眠し、あるものは共食いしたりして細菌やウイルスなどが大発生します。ミミズの口腔からでるある種の酵素は新鮮な木の葉を数時間で腐らせることが出来ますが、この様な酵素をもつ細菌は腐植が無くなると、普段は見向きもしない新鮮な根に取り付き腐らせるのです。その現場に共生している線虫がいるものですから犯人扱いされてしまうのです。
細菌は微小なので目立ちませんが線虫は大きいので目立ってしまうのです。
連作障害は線虫のせいではなく土中の有機物不足による土壌微生物群の食料争奪戦の結果なのです。証拠は最も強力な殺虫剤を撒いて線虫を殺しても連作障害は克服出来ないことで明らかです。
化成肥料を例えるならば、さしずめ回転寿司のようなもので、根の前を通り過ぎる養分を通り過ぎる瞬間に吸い取らないと地下へと流されていってしまいます。
堆肥や有機質肥料は注文寿司のように、根の要求に従って板前みたいに微生物が有機物を分解して必要な養分を与えます。
微生物や菌根菌は根から排出される分泌物を貰ってエネルギーにしているものもいて、うまく共存しているのです。
更に回転寿司のような化成肥料は決められた養分だけが流れてきますが、堆肥や有機質肥料はいろんな微量要素を必要に応じて必要な量だけ板前である微生物が与えてくれます。
しかも板前である微生物は何人(何匹)もいるのです。スプーン一杯(約1g)の堆肥の入った畑の土の中には億単位の微生物が生息しています。
例えば化学肥料を創る場合、植物をすり潰したり燃やして灰にしたりして養分分析します。
その中に含まれる養分の多い順に取り出します。
植物の場合、窒素、りん酸,加里が主なものでその他に鉄分、マグネシューム、亜鉛等など微量要素が少量ずつ沢山あります。
小学校の理科で習ったのは植物の三大栄養素は窒素,りん酸、加里でこの三つを与えれば植物は育つと言うことでした。
こんな化石みたいな理論を後生大事に信じていまだにこの三大栄養素を中心に与え続けているのです。
何十年も前の古い顕微鏡で分析された養分のうち多い順に三つ選んでこれだけ与えてれば作物は育つと教えられて、それを実行してきたのです。
従順と言うか律儀と言うか、それでも先祖が入れ続けていてくれた有機物の残存効果でその他の微量要素を作物はかろうじて得ることが出来たので生き延びてこれたのですが、もう限界なのです。